ドナウの彼方で (1981年) (中公文庫)

1978年に出た単行本の文庫化。珍しいブルガリアへの旅行記である。しかも、エスペラントの世界へと飛び込むのである。二重に珍しい本だ。著者は京大・人文研の梅棹忠夫研究室で秘書をやっていたという人物。夫がエスペラントの達人で、その影響によって本人もエスペラントを始めたのだという。そして、当時、エスペラントが世界でもっとも盛んだったブルガリアへと旅に出る。エスペラント協会の人たちに町を案内してもらい、エスペラント学習会に参加し、集会にも出席する。すべてエスペラント語である。いまでは下火になってしまったエスペラント語だが、こんな夢のような時代もあったのかと驚かされた。